⑬ 経済力の二面性の定義
国家経済を論じる際、「経済力」という言葉は極めて広い意味で用いられています。
しかし、その内容を十分に整理しないまま議論すると、異なる概念が混在し、国家経済の本質を見誤るおそれがあります。
そこで、マクロ経済の現実論では、「経済力」を二つの側面に区分し、それぞれを明確に定義します。
第一 絶対的経済力
絶対的経済力とは、国家全体が生み出す商品・製品・サービスの質と量を総合的に評価した経済力をいいます。
これは、単なる貨幣額では測ることのできない実物経済の力であります。
技術水準、生産能力、品質、供給力、人材、研究開発、社会資本、公共財なども、この経済力を構成する重要な要素となります。
国家が継続的に絶対的経済力を高めれば、国民生活はより豊かになり、産業競争力も向上し、その成果は将来世代にも受け継がれていきます。
私は、この絶対的経済力こそ、国家経済が長期的に追求すべき最も重要な経済力であると考えています。
第二 相対的経済力
相対的経済力とは、国内総生産(GDP)、国民所得、企業売上高、所得水準など、貨幣によって表される経済規模をいいます。
この経済力は、為替相場、物価、金融政策、国際情勢、景気循環など、多くの外部要因によって変動します。
そのため、相対的経済力は国家経済を把握する重要な指標ではありますが、国家そのものの実力を完全に表すものではありません。
私は、相対的経済力は「経済活動の結果を示す指標」であり、絶対的経済力は「経済活動を支える基盤」であると考えています。
第三 長期的発展の視点
円高ドル安の局面を例に考えると、この二つの経済力の違いが理解しやすくなります。
円高によって日本企業は厳しい国際競争に直面しました。
その結果、多くの企業は生産性向上、品質改善、技術革新、経営合理化などに取り組みました。
短期的には輸出や貨幣的な経済指標に影響が生じることもありますが、その競争を通じて日本企業の技術力や品質が向上した側面があります。
私は、このような蓄積が絶対的経済力の向上につながったと考えています。
一方、相対的経済力は、その時々の景気や為替などの影響を強く受けるため、短期的な変動が大きくなります。
したがって、国家経済を評価する際には、短期的な貨幣指標だけでなく、長期的な実物経済の発展も併せて考察する必要があります。
第四 国際経済との関係
各国の経済政策は、それぞれ異なる目的や事情のもとで運営されています。
例えば、保護政策を強める国もあれば、市場開放を重視する国もあります。
これらの政策は、短期的な景気対策だけでなく、国内産業の育成、安全保障、雇用維持など、多様な目的を持っています。
私は、各国の政策を評価する際にも、相対的経済力だけでなく、長期的な産業競争力や絶対的経済力の形成という視点が重要であると考えています。
また、国際経済では、貿易摩擦や関税政策が生じた場合でも、その影響は産業ごとに異なります。
直接競争する産業には大きな影響が及ぶ一方、競争関係の薄い産業では間接的な影響にとどまることもあります。
したがって、国際経済の変化を評価する際には、一律に国家全体への影響を論じるのではなく、産業構造や供給網を含めた多面的な分析が必要であります。
結論
マクロ経済の現実論では、「経済力」という概念を、絶対的経済力と相対的経済力の二つに区分します。
相対的経済力は、貨幣によって測定される経済活動の成果を示す指標であります。
一方、絶対的経済力は、商品・製品・サービスの質と量、生産能力、技術力、社会資本、公共財などによって形成される国家の実力そのものであります。
私は、国家経済を長期的に発展させるためには、相対的経済力の向上だけを追求するのではなく、絶対的経済力を着実に高めていくことが最も重要であると考えています。
相対的経済力は時代や国際情勢によって変動します。
しかし、絶対的経済力は、国家が積み重ねてきた技術、知識、産業、人材、公共財という実物経済の成果であり、その蓄積こそが未来の国家経済を支える最大の財産となるのであります。
