㉒ 中国経済の実力
二十一世紀に入り、中国経済は急速な発展を遂げ、GDPでは世界有数の経済大国となりました。
しかし、私は国家の経済力を評価する場合には、GDPという一つの指標だけでは十分ではないと考えています。
マクロ経済の現実論では、前章まで述べてきたように、「相対的経済力」と「絶対的経済力」という二つの視点から国家経済を評価します。
相対的経済力とは、市場規模や国民所得などの経済規模であり、絶対的経済力とは、国家全体の商品・製品・サービスの質・量、さらには技術力・研究開発力・人材力を含めた総合的な生産能力であります。
第一 GDPだけでは国家経済は評価できない
中国は人口が十四億人を超える世界最大級の人口国家です。
GDP総額が巨大になることは当然であり、国家経済を正確に理解するためには、一人当たり所得、産業構造、生産性、技術力なども総合的に考察する必要があります。
巨大な人口を背景とした市場規模は、中国経済の大きな強みでありますが、それだけで国家経済の成熟度を判断することはできません。
第二 製造業大国としての中国
中国は長年、「世界の工場」と呼ばれ、世界各国の製造業を支える巨大な生産拠点として発展してきました。
近年では、単純な組立産業だけでなく、電気自動車、蓄電池、通信機器、高速鉄道、ドローンなど、多くの産業分野で国際競争力を高めています。
一方で、半導体製造装置、最先端素材、航空宇宙分野などでは、依然として欧米や日本の技術への依存も残っています。
つまり、中国経済は、初級・中級産業だけではなく、高度産業への発展段階に入りつつあるものの、すべての分野で世界最高水準に達したとは言えない段階にあります。
第三 絶対的経済力とは何か
マクロ経済の現実論では、真の国家経済力とは、付加価値の高い産業をどれだけ創出できるかによって決まると考えます。
その中心となるものは、
・基礎科学
・応用科学
・医療技術
・AI・情報技術
・宇宙開発
・新素材
・エネルギー技術
など、人類社会全体の生産力を向上させる研究開発であります。
このような産業は、高い知識、高度な教育、多額の研究投資、そして長期間にわたる技術蓄積によって初めて成立します。
私は、このような分野を強化することこそ、国家の絶対的経済力を向上させる最も重要な政策であると考えています。
第四 日本が目指すべき方向
日本は、高賃金国家として、労働集約型産業だけで国際競争を続けることは困難であります。
したがって、付加価値の低い産業については国際分業を活用しながら、国内では高度な研究開発型産業を拡大していくことが重要になります。
ノーベル賞級の研究、新素材、医療技術、ロボット工学、AI、環境技術など、人類社会に新たな価値を創出する産業こそ、日本が世界で存在感を発揮できる分野であります。
高度産業を育成することは、単に企業の利益を増加させるだけではありません。
国民の所得水準を維持し、将来世代の生活水準を向上させることにもつながります。
第五 アジア経済との共存
アジアでは、中国だけでなく、韓国、タイ、ベトナム、インドネシア、インドなど、多くの国々が急速な経済発展を遂げています。
それぞれが得意分野を発展させながら、国際分業を通じて経済成長を実現しています。
私は、日本はこれらの国々を単なる競争相手として捉えるだけではなく、ともに発展する経済パートナーとして位置付けるべきであると考えています。
技術協力、人材育成、インフラ整備、共同研究などを通じてアジア全体の絶対的経済力を高めることが、日本自身の発展にもつながるからであります。
結論
中国経済は、世界有数の経済規模を有する巨大市場として発展を続けています。
しかし、国家経済を評価する際には、GDPだけではなく、産業構造、技術力、研究開発力、人材育成などを含めた「絶対的経済力」の視点から総合的に判断することが重要であります。
マクロ経済の現実論では、二十一世紀の国家競争は、単なる生産量や市場規模の競争ではありません。
人類社会に新たな価値を創造する技術と知識をいかに生み出すかという競争へと移行しています。
私は、日本が高度な研究開発国家として世界をリードし、アジア諸国と協調しながら、人類全体の文明発展に貢献していくことが、これからの国家経済のあるべき姿であると考えています。
